日本が誇る自動車メーカーである日産とホンダは昨年12月末、経営統合に向けた基本合意書を締結したことを発表しました。これによりトヨタ、フォルクスワーゲンに次ぐ世界3位の巨大メーカーが誕生することになりますが、個人的には規模を大きくするだけでは、日産が直面している問題の根本的な課題の解消にならないものと考えます。今回は、日産とホンダとの経営統合について、「日産の課題」という観点から、私の主観に基づく考察をお話しさせていただきます。
トヨタの台頭と日産の大幅減益
■日産のグローバル販売台数の推移

出典:日産自動車
トヨタは、2023年度のグループ全体の世界販売台数が前年度比5%増の1109万台で過去最高を記録し、4年連続で世界販売首位の座を維持しています。一方、日産の同年度の世界販売台数は同4%減の344万台。24年9月には、中間決算で営業利益9割減と大幅な減益が報告されています。
日産がかつての経営不振から立ち直った大きな要因は、カルロス・ゴーン氏のリーダーシップによるものと考えます。当時からメディアではゴーン氏の追放に関する様々な憶測が報じられていましたが、大胆なコストカットや新商品の開発などにより、7000億円近い赤字からのV字回復を果たした立役者はゴーン氏です。しかし、彼が経営陣から追放された結果、日産の再生は頓挫。トヨタが全世界で生産台数1位を誇っている中、日産との間に大きな差が生じているのです。
トヨタと日産の明確な違い
トヨタと日産の差は30年前からすでに明確だったように思います。トヨタが展開していたクレスタ・マークⅡ・チェイサーの3車種は、共通のプラットフォームを使用しながらも、それぞれの車種に専用のパネルや装飾を製造し、兄弟車でありながら独自のキャラクターを持たせていました。トヨタは商品としての差別化を徹底し、多様なターゲット層に訴求する戦略を取っていたのです。
一方の日産は、グロリアやセドリックなどブランド力のある車種を十分に活かしきれず、ブランディング戦略においてトヨタと明確な違いが見られます。特に、日産シーマやセドリックの後継車にあたるフーガは、シーマとの大きな差別化が図られず、ほぼフーガのボディ骨格を基にしており、外装はグリルが違うだけ。内装も木目パネルの差程度にとどまりました。その一方で、車両本体価格は数百万円も高いという不可解な状態に。シーマとセドリックの差別化を怠った結果、平成元年に爆発的な人気を誇ったY31型シーマの価値が失われてしまいました。シーマの消滅は、日産の車両設計やブランディングの失敗を物語っていると言えるのではないでしょうか。
■日産「セドリック」
また、トヨタは30年前から現在に至るまで、「10万キロまでほぼ故障がない」といわれるように国内外で信頼性の高さを堅持しています。高い品質はトヨタの特徴であり、走行距離が増えてもほとんど故障が発生しないことで多くの消費者から支持を集めています。一方、日産は30年前から故障の多さが指摘されてきました。当時から自動車販売員の間では、「日産車はよく壊れるので、トヨタ車にしたほうが安心です」とお客様に勧めることが一般的でした。この評判は全国に広がっており、信頼性の面で日産が劣っているというイメージが業界内外で定着していたと言えます。
さらに、トヨタは1989年、北米で高級車ブランド「レクサス」を立ち上げるなど、時代を先取りした施策を講じてきました。レクサスの世界販売実績は23年、過去最高を記録しています。日産が明確な対米戦略を打ち出せなかったことも、現在の結果に繋がっているのではないでしょうか。
■レクサス2023年全世界販売実績

出典:トヨタ自動車
経営統合の行方は
ゴーン氏の追放後、日産は再び迷走を始め、営業利益が9割減となるなど深刻な状態に陥っています。この一連の流れは、経営陣の戦略や判断の問題であり、結果として企業としての信頼を大きく損ねることとなったのではないでしょうか。
ホンダの23年度の世界販売台数は、407万台。前年度比12・0%増と躍進したものの、日産と合わせてもトヨタに遠く及びません。今回の経営統合がどのような結果をもたらすかはまだ未知数ですが、日産が過去の失敗から学び、顧客目線での製品づくりや戦略の見直しを行わない限り、再び同じ轍を踏む可能性が高いと感じています。
現代は、アメリカのGoogleやFacebook、マイクロソフト、Amazonといった数多くの海外企業が日本市場へ進出しています。こうした中で、長い歴史を持つ日産という企業が経営統合によって1つの独立した存在としての役割を終えることは、日本の自動車産業にとって非常に悲しい出来事と言わざるを得ません。
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田川 英紀

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