カービジネスのSDGsを考える【月刊ガソリンスタンド連載第3回】

車のミライ

ガソリン車は環境に悪いのか?

弊社が貸し出すレンタカーは、現状、全て中古のガソリン車です。ECOカーや電気自動車が台頭する中、レンタカー業界でも電気自動車が増えつつあります。弊社が特許を取得している貸し出しシステムは電気自動車にも対応しており、中古車オークションでは電気自動車も少なからず出回っているため、業務レンタカーでもすぐに電気自動車を貸し出すことは可能です。しかし、私は次の2つの理由から中古のガソリン車にこだわっています。

1つは、まだまだ充電できる場所が少ないということです。これだけカーボンニュートラル、脱炭素と叫んでいる割には、EV充電スタンドはまだ全国で2万地点ほど。ガソリンスタンドの6割ほどの数です。充電設備がないお住まいも多いため、現状は利便性的にガソリン車が優位だと考えています。

そして、弊社が中古のガソリン車にこだわっている理由の2つ目。それは、環境に優しくないからです。「何を言っているんだ?ECOカーや電気自動車のほうが環境に優しいはずだ!」とお叱りの声が飛んできそうですが……実は、新車のエコカーを製造する過程で排出される二酸化炭素は決して少なくありません。排出量は、ガソリン車を製造する場合と比較して、なんと2倍近くに及びます。

  • 5万キロ㍍走行した中古車を16万キロ㍍走行するまで再利用
  • 新車のECOカーを買って16万キロ㍍走行するまで利用

この2つのケースの二酸化炭素排出量は、前者が13・77㌧。後者が20・06㌧。……中古のガソリン車を再利用して走行させたほうが、環境に圧倒的に優しいといえるのではないでしょうか。

ECOカーや電気自動車が環境に悪いわけではない

 私は、決してECOカーや電気自動車が環境に悪いと言っているわけではありません。しかし、既にあるものを使わず、新たな車を製造し、乗り換えることが、果たして本当に環境にとって良いことなのか。これもまた、SDGsを考える上での1つの問題なのではないかと提起しているのです。弊社も、環境が整い次第、電気自動車を導入し、貸し出すことを検討しています。しかし、今はまだその時ではないはず。中古車、ガソリン車も立派な資源です。廃車にすることこそ、環境に悪い行為だと私は考えています。

 ECOカーや電気自動車の台頭は、カービジネスをしている皆さんにとって大きな脅威となっていることでしょう。2035年には、日本でもガソリン車の新車販売が禁止されることになっています。しかし「販売」は禁止されたとしても「走行」が禁止になるわけではありません。

また、EUではガソリン車の販売を2035年以降、全面禁止する方針を転換し、条件付きで認めることを明らかにしました。脱炭素につながる燃料として期待されるイーフューエル(e-fuel)をガソリンなどに混ぜて使用する車両の新規販売は、認められる見通しです。この動きは、走行時のみならず、製造時の二酸化炭素排出量も加味して環境負荷が考えられたからこそ。まさに「環境に優しい」を本質的に考えたがゆえの転換だといえるでしょう。

「電気」は持続可能な資源なのかという問題も

トヨタ自動車の豊田章男社長は、2020年の記者会見でこう述べています。

「国内すべての車が電気自動車になったと仮定すると、電力供給や充電のために、原子力発電所10基分に相当する発電能力の強化が必要になる」

皆さんも強く感じられているところだと思いますが、昨今の電気料金の値上げは著しく、電力会社は今夏の電力需給も非常に厳しくなる見通しだと示しています。日常的に電気が不足し、原発の再稼働の目処もたたない中、どのように電気自動車の電力をまかなうのでしょうか。……このような問題も、なかなか電気自動車が普及しない要因です。

「エネルギーをみんなに」「つくる責任、つかう責任」

これらもまた、SDGsで掲げられている目標の1つ。「ガソリン車から電気自動車に」これだけでSDGsの目標が達成できるとは、到底考えられません。とはいえ、綺麗事ばかりを言うつもりもありません。地球も大事ですが、私たちはカービジネスで利益を出し、社員を幸せに、顧客を幸せにすることが使命であるはずです。時代が変化していく以上、安定が継続するビジネスなどありません。

社会の大きな変化とともに、それに伴う課題や問題の本質に着眼してこそ、ビジネスの発展とその先にある安定が見えてくるのではないでしょうか。中古車販売事業からレンタカー事業に進出した弊社ですが、まだまだ腰を据えて落ち着くつもりはありません。衰退していくとも言われているカービジネス。時代を読んで、ニーズを読んで、ミライを読んで、一緒に盛り上げていきましょう!

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田川 英紀
19歳から自動車販売店にて勤務を経て26歳で現在の(株)カーチョイスを設立。現在45歳。2児の父。26年間自動車販売を経験してきたプロの目から見た自動車業界の記事を情熱を持って書きます。中古車販売業者は競合が何万店もあり、どれだけ頑張っても売上が伸びないため、「このままでは倒産してしまうかもしれない」という思いに暮れることもありました。そして、大きく方向転換しなくてはという思いと、人に喜んでもらえる仕事がしたいという思いから、「業務レンタカー」という仕事が誕生しました。

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