ダイハツの不正による影響【月刊ガソリンスタンド連載第12回】

車のミライ

ご存じのとおり、ダイハツ工業の不正問題が連日メディアを賑わせています。1月のダイハツ車の新車販売台数は、6割以上減少。全車種の生産・出荷を停止しているということですから、販売しているのは在庫にすぎず、今後はさらに販売数が落ちていくことでしょう。この問題によって、自動車業界の構図も大きく変わってしまいかねません。中古車販売業、関連工場を営んでいる方への影響も計り知れませんが、弊社「業務レンタカー」でも多くのダイハツ車を扱っているため、決して無縁ではありません。他のレンタカー業者も同様でしょう。ただ、業務レンタカーへの影響は限定的だと確信しています。これは「差別化」ができているためです。

今回の事件の大きな問題は「安全性」が脅かされたこと

これまでも、メーカーによる不正問題はありました。しかし、不正したのは「燃費」や「二酸化炭素排出量」などが大半。今回の事件の大きな問題点は、乗車する方の安全性が脅かされない衝突試験に不正があったことです。燃費や環境への影響に関する不正も許容はできないものの、レンタカーを選ぶ方においてはあまり考慮されない点でもあります。一方、レンタカーであったとしても、エアバックが膨らまないかもしれない車に乗りたいとは思いません。

さらに、今回は特定の車種ではなく、全車種に不正があったということもまた大きな問題です。最も古い事案は、1989年だったということ。つまり、30年以上にわたって不正が放置されてきたのです。

レンタカー業界への影響

出典:一般社団法人全国軽自動車協会連合会

軽自動車の保有台数・比率は年々上昇しており、2022年には自動車の総保有台数の4割以上を軽自動車が占めています。とくに公共交通機関が利用しにくいエリアの普及率は非常に高く、人口密度500人/k㎡未満の市町村では、約半数の世帯が軽自動車を保有しているといいます。そしてレンタカーにおいても、レンタル料が安く、小回りが効く軽自動車は人気があるため、レンタカー業者の保有数は少なくありません。

一般的な数時間から数日程度の期間で貸し出しているレンタカー会社の多くは、車の車種まで指定できません。選べるのは車のクラスだけですので、いざダイハツ車が提供されることになったら「変えてくれ」という方が一定数いらっしゃると思います。これだけでも、現場の手間は激増します。また、ダイハツ車が避けられれば稼働台数が減るということ。少ない台数で稼働させるためさらに手間が増えるとともに、収益が減ることもあるでしょう。レンタカー業界はレッドオーシャンですから、「ダイハツしか選べないなら他社に行く」ことが容易にできてしまいますからね。

ダイハツ車を売って、別の車種に買い換えるのも一朝一夕にはいかないはずです。まず、買い替えには諸費用がかかります。私は元々中古車販売業を営んでいたのでこの辺りのことは詳しいのですが、出品料や落札料、成約料、陸送代……これだけでも10〜15万円程度はかかります。さらに、購入後の重量税、自賠責、自動車税、ブレーキパットの点検、ベルトの交換などを考えると、1台あたりの買い替え手数料は20万円ではききません。さらに、すでにダイハツ車の相場はかなり落ち、逆にスズキ車など他の軽自動車の相場は上がっているでしょうから、同じ金額で同クラスの車種に買い換えることはできません。結果として、たとえばダイハツからスズキの同等クラスの車に買い換えるのに、1台あたり50万円程度はかかってしまうものと考えられます。

「不測の事態」の影響の最小限にするにも「差別化」は効果的

業務レンタカーでも、少なからずダイハツ車を扱っています。さらに弊社では、利用者様に特定の車を選んでいただけることを売りの一つにしていますので、まだ統計は取っていませんがダイハツ車の稼働数は減っているはずです。ただ、この仕組みを導入しているからこそ、「避けられる」ことはあっても、現場で混乱が起こることはありません。また、収益が落ちているということもありません。この最も大きな理由は、長期レンタカー市場がブルーオーシャンだからです。

一般的なレンタカーであれば、乗りたくない車種しかなければ他社に行くことができますが、長期レンタルとなるとそもそも事業者が少ないためそれができません。また、長期間レンタカーを借りる人は、数時間や数日間レンタカーを借りる人以上に、レンタルすることに執着するものです。

中長期的には、弊社としても利用者のニーズや安全性の観点から、今回の一件の影響を見ながらダイハツ車から他社の車に入れ替えることを視野に検討していますが、早急に手を打たなければならない状況になっていないのは、長く「差別化」に取り組んできたからこそだと思っています。もちろん、このような事態に備えて差別化を図ってきたわけではありませんが、今回の一件を通して、改めて事業の伸長や安定には「差別化」が不可欠であると認識しました。

 

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