どんなビジネスも「変化」に対応してこそ拡大できるのであり、生き残れるのである【月刊ガソリンスタンド連載第1回】
電気自動車や低燃費動車の大衆化。これは、ガソリンスタンド経営における大きな向かい風といえるでしょう。経営者の皆さまにおかれては、なんとか顧客を囲い込もうと価格競争という荒波に乗り、他と差別化できるサービスの開発・提供に勤しみ、それでも「情勢の変化」という不可抗力なものを相手に、ぬぐえぬ不安を抱えているのではないでしょうか。 レンタカー業界でも、カーリースやカーシェアリングなど新たな車の所有方法・使用方法の登場という「変化」は、ビジネスを拡大するうえで大きな脅威となっています。
ただ、変化は脅威であると同時に「チャンス」。私は常々、「変化」に対応するには、まず変化を分析し、変化によってもたらされた「新たなニーズ」を発掘することが必要だと考えています。この「ニーズ」は、顕在化されたものに留まりません。消費者もまた、変化に対応している途中であり、顕在化されていない「潜在的なニーズ」が眠っているはずなのです。
レンタカーの概念を覆した「業務レンタカー」
「業務レンタカー」は、これまで常識だったレンタカーの「スポット利用」という概念を覆し、2週間や1ヶ月などの中長期レンタルを中心に事業を拡大していきました。2016年の立ち上げからわずか6年後の2022年には、全国22店舗にまで拡大。うち18店舗は、一部上場を果たしている「紳士服のコナカ」併設店5店舗を含めたフランチャイズ店です。参入当時、完全なるレッドオーシャン市場であったレンタカービジネスおよびレンタカーのフランチャイズビジネスで、なぜここまで事業を拡大できたのか。これがまさに、「変化」に対応し、消費者の潜在ニーズに着目したうえで事業に落とし込んだからこそだと私は考えています。
車の利用方法における潜在ニーズとは
車離れ、あるいは車の所有方法・使用方法の多様化は、経済面や市場の成熟化も理由として挙げられるでしょうが、それに伴う「維持の手間や費用をかけたくない」「車を持たないという選択をしたい」といった消費者ニーズが背景にあります。一方で、交通手段として車が必要な世帯は一定数あり、子育てや介護、転勤など、生涯の間で一定期間、車を必要とする時期があることも少なくありません。こういった方々の選択肢の1つとしてカーリースやカーシェアリングがあったわけですが、カーリースは契約期間が数年であることから実質的には所有と大きく変わらず、カーシェアについてはタイミングが合ったときしか利用できません。長期レンタカーとは、言ってみればレンタカーの「サブスク」です。『車のサブスクなんて、すでに多くの企業が始めているじゃないか』とお思いかもしれません。しかし、多くの車のサブスクサービスは、複数年契約。実質的には「サブスク」とはいえません。一方、業務レンタカーは1日あたり880円から始められ、乗り換えも、返却時期も自由。これこそが、真の車の「サブスク」サービスだと私たちは考えています。
『車を所有するように1日単位から1ヶ月単位までレンタルしたい』まさに、時代の変化、情勢の変化の中から生まれた消費者のこの潜在ニーズを体現したのが、業務レンタカーなのです。
ガソリンスタンドに「車のミライ」につながる価値を
私は、レンタカー事業を立ち上げる前から30年近く、中古車業界に身を置いています。中古車販売の傍らでできる事業として、業務レンタカーを立ち上げたのです。今では、フランチャイズ店舗も18店。車業界とは無縁の企業様にも加盟いただいていますが、ガソリンスタンド経営こそが業務レンタカーFCと最も相性の良い事業だと私は考えています。それが、この連載を始めさせていただいた大きな理由でもあります。ガソリンスタンド経営における「変化」への対応策。この1つに「新しい価値の提供」が挙げられます。この「新しい価値」として、業務レンタカーが重要な役割を担えるものと確信しているのです。
ガソリンスタンドと業務レンタカー。両者の親和性は非常に高い
利用者属性および事業内容、営業方法という点で、ガソリンスタンドと業務レンタカーの類似点は多くあります。親和性が高いことから、事業を始めることも容易かつ、相乗効果による双方の事業の拡大が見込めます。
ガソリンスタンド経営の大きな課題である「顧客の囲い込み」といった観点からいっても、自社で車を貸し出すことでリピーターの増加が見込めます。これはスポット利用のレンタカーではなく、長期のレンタカーであるからこそ見込めるわけです。
ガソリンスタンド | 業務レンタカー | |
利用者 | 車を所有している人 | 維持の費用や手間をかけず車を利用したい人 |
業務
内容 |
|
|
営業
方法 |
少人数で営業可能 | 特許取得の貸出・返却・管理システムでワンオペ営業が可能 |
詳細な試算は2回目以降の連載でお伝えしますが、ガソリンスタンド経営の傍らで業務レンタカーを運営していただくと、8ヶ月目には単月黒字。2年目以降は、25%前後の利益率を維持できます。
ガソリンスタンドの役割の一つに、「顧客のカーライフをサポートする」こともあると私は考えています。この役割を起点に顧客のニーズを考えてみると、「車の多様な所有方法・利用方法」を提案・提供するガソリンスタンドがあっても良いはずです。「給油する」という顕在ニーズだけでなく、顧客の潜在ニーズに着目する。これこそが、これからのガソリンスタンドの生き残り戦略の1つになっていくのではないでしょうか。

田川 英紀

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