「コストコ」の脅威に打ち勝つには【月刊ガソリンスタンド連載第8回】

車のミライ

ガソリン価格の高騰に頭を悩ませている事業者さんも多いことと思いますが、先日、面白いデータを見つけたので共有させていただきます。

ガソリン価格高騰も8割以上は給油頻度が落ちていない

出典:ゴーゴーラボ

8月には、原油価格の高騰や円安の影響を受け、東京で15年ぶりにレギュラーガソリン価格が180円台を突破しました。政府は10月以降もガソリン補助金を継続すると発表したものの、消費者の手が届きやすい価格に落ち着くにはまだ時間がかかりそうです。

一方、ガソリンスタンド情報共有サイト「ゴーゴーラボ」が7〜8月に実施した調査によれば、ガソリン価格が高騰する中、給油頻度が変わらない・やや増えた・増えたと回答した人は8割を超えています。これについては、営業や出社など必要に迫られて車両を利用している人が多いということとともに、新型コロナウイルスの5類感染症移行に伴う経済活動の再開を受け、国民の「移動」が旺盛になっていることが起因しているものと私は推察します。

理由はどうであれ、多くの方は「高くても入れざるを得ない」状況にあるということ。これはガソリンスタンド経営者にとって望ましいことですが、ガソリン価格が高くなると「少しでも安く入れたい」という心理は当然ながら高まります。ともなると、すでに多くの経営者が脅威に感じていらっしゃるであろう「コストコ」の存在感が増すのです。

ガソリン価格高騰の折、コストコの脅威は増すばかり

皆さんご存じのとおり、コストコとは、アメリカ生まれの会員制大型倉庫型ショップです。近年では、独自でガソリンスタンドを併設し、原価に近い金額で販売しています。釈迦に説法でしょうが、コストコの存在は間違いなくガソリンスタンドにとって脅威です。10円、20円も安くガソリンを提供され、おまけに魅力的な商品が揃っている販売店に太刀打ちすることはできません。コストコの脅威は、商圏が広いことにもあります。8月には、弊社のある大阪府でも門真市というところにコストコがオープンしました。大阪市のお隣の市になりますが、すでに大阪市民も殺到しているといいます。現在、日本全国に33店舗あるコストコですが、その人気の高さから各自治体が誘致に動いているとも聞きます。商圏が広いコストコがさらに増えるとなると、全国のガソリンスタンドはさらに苦戦を強いられる状況になることが予測されます。

「少しでも安くガソリンを入れたい」と考える人が増えている今、コストコを模範する事業者が出てくる可能性も視野に入れておかなければならないでしょう。コストコの手法は、ガソリンの安さで集客することであり、会員数を増やすことです。この手法は、郊外エリアのショッピングモールやアウトレットモールなどでも有効なはずです。

ガソリンスタンドに「付加価値」を

ガソリンの高騰、ガソリンを安く提供する事業者の台頭、そして電気自動車の増加。ガソリンスタンド経営への風当たりは増すばかりです。しかしながら、やるべきことは実にシンプルであると私は考えます。ガソリンスタンドがレギュラーガソリンを180円/㍑、コストコが160円/㍑で提供しているとすれば、その差は20円/1㍑。40㍑の給油と想定すると、800円です。要は、これ以上の価値を付帯することができれば、集客は可能です。

多くのガソリンスタンドが行っている洗車やコーティング、車検が一手にできるとなれば、800円ほどの差額は埋められるかもしれません。しかし、これらは対象者が絞られるとともに、「持続可能性」が低いと私は考えます。というのも、いずれも「人手」を伴う業務だからです。少子高齢化が進む昨今では、自動車業界に限らずあらゆる産業で人手不足が深刻化しています。

持続可能性があり、ガソリンスタンドと親和性が高く、相乗効果に期待できる副業というのが、業務レンタカーです。業務レンタカーの利用者の多くは、1〜3カ月利用されるため、貸し出し・返却の手間がかからず、1人の従業員で100台のレンタカーを稼働させることができます。これは、特許取得のシステムによるものですので、すでに実証されています。さらに、レンタカーはガソリンを満タンにして返却しなければなりませんから、ガソリンの需要増にも期待できます。

出典:ゴーゴーラボ

「ゴーゴーラボ」では、給油頻度の回数についても調査しています。ガソリン価格高騰の中にあっても給油頻度が落ちていない方が多いとはいえ、4割の方が月1回以下の給油頻度となっています。ガソリン代が高くても給油はする。しかしながら、利用頻度は高くない。こうなると、車を手放し、必要なときにレンタカーやカーリース、カーシェアリングを使おうと考える人はますます増えていくものと考えられます。ガソリンスタンドがターゲットにすべきは、車を所有し、恒常的にガソリンを入れる人に加え、必要なときに車を利用する人です。後者については、ガソリンスタンド内や併設した店舗で車を貸し出すことで、囲い込むことができるでしょう。

 ガソリン価格高騰に際し、コストコの存在は大きな脅威であることは間違いありません。しかし、コストコが取っている「相乗効果による集客」はビジネス上、非常に理にかなっている手法であり、ガソリンスタンドにおいても形を変えて模範できるのではないでしょうか。

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田川 英紀
19歳から自動車販売店にて勤務を経て26歳で現在の(株)カーチョイスを設立。現在45歳。2児の父。26年間自動車販売を経験してきたプロの目から見た自動車業界の記事を情熱を持って書きます。中古車販売業者は競合が何万店もあり、どれだけ頑張っても売上が伸びないため、「このままでは倒産してしまうかもしれない」という思いに暮れることもありました。そして、大きく方向転換しなくてはという思いと、人に喜んでもらえる仕事がしたいという思いから、「業務レンタカー」という仕事が誕生しました。

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